○●。秋の薬草 オミナエシ。●○
オミナエシは秋の七草の一つです。
オミナエシは、女郎花、敗醤(ハイショウ)とも書きます。旧仮名遣いでは、ヲミナエシ(をみなえし)。

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秋の七草は、以下の通り
女郎花(オミナエシ) オミナエシ科
尾花(オバナ:ススキのこと) イネ科
桔梗(キキョウ) キキョウ科
撫子(ナデシコ) ナデシコ科
藤袴(フジバカマ) キク科
葛(クズ) マメ科
萩(ハギ) マメ科


オミナエシは、
早くも、神農本草経に収載されています。
また、『金匱要略』には、敗醤(ハイショウ)を含む「薏苡附子敗醤散(ヨクイブシハイショウサン)」が以下のように記載されています。
腸癰(チョウヨウ)の病は、皮膚はかさつき、腹の皮はひきつり、腹を押せば、腫瘍のようだが、腹には塊がない。身体には熱がなく、脈は多い。これは腹に癰膿がある。薏苡附子敗醤散(ヨクイブシハイショウサン)がこれを治す。
処方:薏苡仁(ヨクイニン)十分、附子(ブシ)二分、敗醤(ハイショウ)五分


採集と貯蔵:野生のものは夏、秋季に採集する。栽培品は開花前に収穫する。洗浄して、晒して乾燥する。(中華本草)
    秋に根を掘り取り、水洗いして日干しにする。(「薬草カラー図鑑」伊沢一男)

薬効と用い方:根には一種の悪臭がある。煎じた液で眼を洗う。漢方ではオケツ(古血)や膿汁を出す効があるので、盲腸炎や婦人病、帯下の時にこれを他の薬と混和して使用する。(「実用の薬草」栗原愛塔先生)
はれもの・解毒・利尿には、乾燥した(オミナエシ)根2g、芍薬8g、水400ccから半量まで煎じて、1日3回に分けて、空腹時に飲む。 (「薬草カラー図鑑」 伊沢一男先生)
吐血、ジク血、帯下を治し、膿を排して婦人産後の血運腹痛を治す。
赤眼、障翳を治し、風痺及びミミダレに効果があるともいう。
婦人 敗醤を煮てから水に浸して調食すれば、オケツ(ふるち)を破り、胎を催すという。(「民間薬用植物」梅村甚太郎先生)

学名:1 .Patrinia scabiosaefolia Fisch. Ex Trev.  「中華本草」
     2. Parinia uillosa (Thunb.) Juss.[Valeriana uillosa Thunb.] 「中華本草」
     3. Patrinia scabiosaefolia Link 「民間薬用植物」

薬理作用(中華本草):
1.沈静作用。オミナエシのアルコール抽出物には、鎮静作用とバルビツールの催眠作用を増強する。(注:中国には、オミナエシを主剤とした鎮静剤があります。)
2.オミナエシには、肝細胞の再生を促進し、肝細胞の変性を防止する作用がある。
3.オミナエシの熱水抽出物(500μg/ml)は、子宮頸がん細胞に対しての抑制率は100%で、正常細胞に対しては、増殖を促進する作用がある。
4.オミナエシの熱水抽出物を、ガン(肉瘤-180)のマウスの腹腔に注射すると、ガン細胞の成長率を57.4%抑制した。
 
[秋の薬草
○●。秋の薬草 葛(クズ)。●○
葛は、秋の七草の一つで、よく使われている薬草でもあります。

秋の七草は、以下の通り
女郎花(オミナエシ) オミナエシ科
尾花(オバナ:ススキのこと) イネ科
桔梗(キキョウ) キキョウ科
撫子(ナデシコ) ナデシコ科
藤袴(フジバカマ) キク科
葛(クズ) マメ科
萩(ハギ) マメ科

葛は、風邪の漢方薬として知られている「葛根湯(かっこんとう)」の主成分です。
葛根(かっこん)という名の通り、根が主に用いられますが、花も用いられます。
「救民妙薬」には、二日酔いに「葛の花」を用いるとあります。
また、葛の根からデンプンをとり、精製したものを葛粉(クズコ)といいます。
しかし、クズコと称するものの大部分は、葛が原料ではありません。
そこで、本物の葛のクズコを本葛という場合もあります。

生姜湯(ショウガトウ)は、風邪のときに用いると、治りが早まります。
これには、クズコが入っていますが、市販品の多くは、ダダのデンプンが大部分です。
やはり本葛を使用しているものが効きます。

この文章を書いているうちに、昔 暗誦した和歌を思い出しました。
誰の作かは、忘れましたが。
『葛の花 踏みしだかれて 色あたらし。
            この山道を 行きし人あり。』

葛の根である葛根は、早くも、最古の薬物書である「神農本草経(シンノウホンゾウキョウ)」に記載されています。また、種についても触れています。

神農本草経
葛根: 別名を斉根ともいう。味は甘く平である。川や谷に生ずる。消渇、身の大熱(解熱作用ということ)、嘔吐や諸々の麻痺や痺れを治す。陰氣を起こし(精神状態が良くする)、諸毒を解す。
葛の種は、下痢を治す。 


江戸時代の「救民妙薬」には、葛(葛根)が何ヶ所かに収載されています。
救民妙薬
葛  諸々の毒を解す  葛の根を、煎じて用いると良い。
   淋病の薬    葛の粉、カワニナの同量を粉にして、1匁ずつ、葛水にて用いる。
   霍乱を治す   葛の粉10匁、胡椒4匁を粉にして用いる。かくらん、または虫(寄生虫)、食傷(食中毒)、下痢のいずれにも良い。
葛の花  酒毒(二日酔い)には、葛の花を陰干しにして、お湯で用いると良い。



「実用の薬草」  栗原愛塔先生
葛:根は発汗解熱の効がある。冬季に根を掘り取り(地下30cmより、さらに深いところのが良い。)日干し、5~8g煎じて飲む。たいがいは、漢方で有名な「葛根湯」の原料として用い、単味で使用することは少ない。花は酒毒を解する。1回3~7g煎じて飲む。
る。

「薬草カラー図鑑」   伊沢一男先生
クズ 葛
採取時期と調整法 根はナマのままで夏か秋、花は8月ごろに採取する。総状につく花は下の方から咲くので、一番下の花が咲き始めたころをめどににする。風通しのよいところで、日干しにする。

薬効と用い方  健康飲料に水洗いした生の根を約100g、小さく刻んでミキサーにいれ、水を加えて砕いた後、繊維質が沈殿したら、上澄み液を別の容器に移し、これを1週間分とし、朝夕2回、食前に飲む。飲み残しは冷蔵庫に保存しておくこと。 
二日酔いに  乾燥したクズの花(葛花)3~5gを300ccの水で煎じ、煮立ったら火を止め、冷めてから飲む。
風邪のひき始めに くず湯として熱いものを飲む。


最後に、
「活血化瘀治療疑難病」  翁維良先生主編
には、活血化瘀薬物 の一つとして葛根が記載されています。
葛根  風邪薬としての作用のほかに、活血化瘀作用があるとして「生(の葛根)は破血の作用がある」としています。(破血ハケツとは、強力な血流改善作用などをいいます。)
葛根及びその抽出物のフラボンには、血管拡張作用がある。
高血圧性頭痛、眩暈、動脈硬化、狭心症の痛み、突発性難聴、中心性網膜炎など広範囲に用いる。

葛は葛根湯の主成分ですので、比較的なじみのある生薬ですが、効き目は、実はたいしたものなのです。
 
[秋の薬草
○●。秋の薬草 瞿麦(ナデシコ)。●○
ナデシコは、秋の七草の一つで、「撫子」「 瞿麦」とも漢字が当てられています。
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秋の七草は、以下の通り
女郎花(オミナエシ) オミナエシ科
尾花(オバナ:ススキのこと) イネ科
桔梗(キキョウ) キキョウ科
撫子(ナデシコ) ナデシコ科
藤袴(フジバカマ) キク科
葛(クズ) マメ科
萩(ハギ) マメ科

琉球王国の呉継志の「質問本草」(1837年)には、ナデシコについても記載されています。

十様錦(瞿麦、ナデシコ)
質問「荒野に生じる。春に苗が出て、夏に花が咲きます。花ビラは、小さく分かれていて、小さな実が出来ます。
   この図の草は何でしょうか?」
返答「花の名は、十様錦です。」(甲辰の年。潘貞蔚、石家辰、孫景山、陳文錦よりの返答)
  (図は、「質問本草」より)
    
ナデシコは、梅村甚太郎先生の「民間薬用植物」、伊沢一男先生の「薬草カラー図鑑」にも記載がありません。日本では、ほとんど薬用にされていないようです。


中国の文献にも、ナデシコの薬用については、少ないのですが、「中華本草」には、瞿麦についての記載があります。
瞿麦(なでしこ)
初出:『雷公炮炙論』
学名: l.Dianthus superbus L.2.Dianthus chinensis L.
採集と貯蔵:夏、秋に全草をとる。雑草や泥を除去し、段に切ることもあれば切らないこともある。晒して乾燥する。
薬理作用: 1、利尿作用がある 、
      2、瞿麦の煎剤は腸管に対して興奮作用がある。
      3、瞿麦は蛙の心臓、兔の心臓に対して非常に强い抑制作用がある。
        瞿麦の穗の煎剤は、麻醉をした犬に対して降压作用がある。
      4、10%の瞿麦の煎剤は、試験管内で8-12分で吸血虫を殺すことが出来る。

性味:味は苦であって、性質は寒である。
帰経: 心・肝・小腸・膀胱に帰経する。
功能主治: 利尿作用がある。湿熱をさます。活血通経の作用がある。
用法用量: 内服の場合は、3~10gをせんじるが、丸剤や散剤にする。外用の場合は、適量を煎じて患部を洗う。または研いで粉にして、患部にふりかける。
注意:脾、腎気虚の者、及び妊婦には禁忌である。
 
[秋の薬草
○●。秋の薬草 フジバカマ。●○
フジバカマ(キク科の多年草)は、秋の七草の一つで、漢名を蘭草(佩蘭)といい、早くも「神農本草経」に記載されています。

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フジバカマの学名である、Eupatorium fortunei で、調べてみると、「中国薬典」「中華本草」などには、「佩蘭(ハイラン)」となっています。
「佩蘭(ハイラン)」の別名の一つに、「蘭草」が挙げられています。
「蘭草」そのものは、「中国薬典」「中華本草」などには、見当たりません。
考察するに、
日本では、 「神農本草経」にあるままに、フジバカマの漢名を「蘭草」とし、
中国では、時代の変遷で「佩蘭(ハイラン)」の名称が一般化したのでしょう。

蘭草 : 味は辛く、性質は平である。水道を利し,蠱毒(コドク:蠱コについて書くと面白いのですが、長くなるので省きます。)を殺し,不祥を避ける。久しく服すれば気を益し、身が軽くなり、老いず、神明に、通じる。一名を水香という。池沢に生ずる。(神農本草経)

琉球王国の呉継志の「質問本草」には、フジバカマについても記載されています。
蘭草(フヂバカマ)
質問「原野に生じる。春に苗が出て、3ー4尺の高さになり、秋に花が咲きます。
   この図の草は何でしょうか?」
返答「これは、蘭草であって、沢蘭の仲間の草です。花と葉は、沢蘭と同じようですが、蘭草の茎は丸く、沢蘭の茎は角ばっています。そこが少し違います。」(壬寅の年。陳文錦、李興成、盧享春よりの返答)
  (図は、「質問本草」より)


採集と調整法:
陰干しして、煎じて服用する。(「民間薬用植物」梅村甚太郎先生)  
茎葉を乾燥し、1回4~5g煎じて糖尿病に飲む。(「実用の薬草」栗原愛塔先生)
つぼみをつけたものを採取して、2~3日、日干しにしてから、あとは風通しの良い所で乾燥させる。乾燥中に良い香りが出て来る。乾燥後は、密閉容器に貯蔵する。(「薬草カラー図鑑」伊沢一男先生)


薬効と用い方:
水道を利し、月経を調へ、胸中の結痰を除き、癰腫を消し、よく悪気を去る。(「民間薬用植物」梅村甚太郎先生)  
月経を調え、または癰種を除去し悪気を去るのにも良い。(「実用の薬草」栗原愛塔先生)
皮膚の痒みに  乾燥した全草300~500gをこまかく刻んで布袋にいれ、初めになべで煮出してから、袋ごと風呂に入れて入浴する。かゆみの部分をこの袋でこすると効果的である。
糖尿病の予防と治療に  乾燥フジバカマ(蘭草)、連銭草(カキドオシ)、ビワ葉、タラノキ樹皮各5gをまぜて1日量とし、水400ccで半量にせんじて、1日3回に分けて服用する。(「薬草カラー図鑑」伊沢一男先生)
 
[秋の薬草
○●。秋の薬草 ハギ。●○
萩は、マメ科の植物で、秋の七草の一つです。
漢名を胡枝花。

ハギについては、「救民妙薬」に薬効が2ヶ所に記載されています。
湯火傷(やけどの事): 萩を黒焼を、カブの絞り汁に溶いて、ゆるゆるとつけると良い。
鼠の噛みキズ:萩の茎の古くなって朽ちたのを干し、粉にしてつけると良い。
「救民妙薬」は、江戸時代に刊行された実用薬物書で、多くの版を重ね、明治にいたるまで、出版され続けたベストセラーです。
水戸の黄門様で知られる徳川光圀が、家臣の穂積甫庵に命じて編纂させたものです。
「救民妙薬」について、興味があれば、
こちら  http://yakuyoukonchu.blog115.fc2.com/blog-category-7.html   を参照ください。


初出:「救荒本草」に初めて薬として記載される。(ヤマハギ・胡枝子:「中華本草」)

採集と調整法:
根を掘り取り乾燥する。(「実用の薬草」栗原愛塔先生)
秋、花の終わりに近いころ、根をほりとって、水洗いしてから、適当な大きさに刻んで日干しにする。(ヤマハギ:「薬草カラー図鑑」伊沢一男先生)
夏、秋に採集する。生のまま用いるか、または切って晒して乾燥させる。( 「中華本草」)
 
薬効と用い方:
めまい、のぼせの時に、これを刻んで、1回2~4gを煎じて服用する。(「実用の薬草」栗原愛塔先生)

婦人のめまい・のぼせに・・・乾燥した根を2~5g、1回量として、水300ccで1/2量にまで煎じて、1回に服用する。(ヤマハギ:「薬草カラー図鑑」伊沢一男先生)

熱を冷まし肺を潤す。利尿通淋の作用がある。止血作用がある。
肺に熱のある咳嗽、感冒発熱、百日咳、淋证、吐血、鼻血、血尿、血便を治す。
煎汤,9-15g(生のは30-60g)を煎じて服用する。(ヤマハギ:「中華本草」)

青森県では蕎麦を食べて中った時、胡枝子(ハギ)を煎じて服用する。
青森県では、難産のときにも、煎じて服用させ、出産を安らかにする。
葉もまた煎じて服用すれば、蕎麦の中毒に効がある。
尾張の国では、茎を焼いてその汁を出来物につける。
水戸あたりでは、鼠にかまれたときには、萩の茎の古くなって朽ちたものを干して、粉にして、これをつける。(「民間薬用植物」梅村甚太郎先生)
 
[秋の薬草

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