魚鱗癬の針灸療法
魚鱗癬の薬物(中薬、漢方薬)についての中国語での文献は、多々あります。
有効であるか否かは別として、鍼灸などの経絡による治療法は
ないのだろうかと思い、調べてみました。
予想したとおり、ほとんどありませんでした。
わずかに、二つの書籍にほんの少し記述されていました。
ここには、難解な中医学用語、穴位(ケツイ:要するにツボのこと)用語が出てきますが、
そのまま訳文に使いました。下手に意訳すると、反って意味が不明になったりしますので。
また、鍼灸について、専門外なので、どの程度効くのか、効かないのかはわかりません。
ただ、参考に資するために紹介します。
意外と効果があるかもしれません。
その1
「皮膚病鍼灸療法」 李連生 先生著、天津科学技術出版社 、1993.10 より
尋常性魚鱗病(Ichtyosis Vulgaris)
尋常性魚鱗病は、一種のよく見られる遺伝性の皮膚角化病である。
(注:原文には常見とある。常に見られる、とある位だから、中国では多いということでしょう。)
臨床上の特長は、幼児期に発病すること、皮膚の乾燥、魚の鱗状であること、
症状に軽重があること、冬は重く春は軽いことである。
病因:尋常性魚鱗癬には、常染色体の優性遺伝と伴性遺伝とがある。
この他には、先天性のビタミンAの利用の不良と関係がある可能性がある。
患者の血液中のビタミンAのレベルが低い。
常に家族史があるが、家族の全ての世代で症状が明確にあるとは限らない。
中医学では、本病を「先天稟賦不足」、「後天脾胃失養」「営血*毀損」
「致血虚生風」「風勝則燥」「皮膚失於*濡養」によって発病する、と解釈している。
臨床表現
(一)顕性尋常型魚鱗病
本型は、男女の別なく発症する。幼年期より発病し、年齢の増加と共に、重症化する。
青春期にいたって最も重くなる。その後は、それ以上重くはならない。
皮膚の損傷は、伸側に主に分布する。特に四肢が更に甚だしい。
重い患者は全身に及び、頭皮にも累が及ぶ。腋、肘、膝の後ろなど
屈折部及び掌跖には症状が出ない。
皮膚の乾燥は、冬季に更に甚だしくなる。皮膚の上には灰白色の
細かい魚鱗状の鱗屑が覆う。
本型は常染色体の優性遺伝であり、病状は穏定している。
(二)伴性尋常型魚鱗癬
比較的少なく、男性のみに見られる。生後すぐ、あるいは嬰児期に発病する。
皮膚の損傷は全身に及ぶ。頭皮、顔の側面、耳の前、頸の部分が最も重い。
腹部は背部に比べると、厳重である。腋、肘、ひざの裏は常に同時に累をこうむる。
皮膚は乾燥してザラザラしており、棕黒色の大きな魚鱗状の魚鱗に覆われている。
毛髪もパサパサであることもある。掌跖の皮膚は正常である。
皮膚の損傷は、年齢の増加によって軽減するとは限らず、ひどくなる場合もある。
本病の遺伝子を保持している女性は、一般には発病しない。
まれに、前臂(ひじ)及び小腿にうすい鱗屑が出現することがある。
治療:
穴位:腎兪(じんゆ)、脾兪(ひゆ)、肺兪(はいゆ)、関元(かんげん)、
中脘(ちゅうかん)、曲池(きょくち)、内関(ないかん)、陽池(ようち)、
三陰交(さんいんこう)、足三里(あしさんり)、太谿(たいけい)。
方法:先に背側に針をし、その後腹側に針をし、交互に行う。
平補平瀉法を施す。1日1回。10回を1治療行程とする。
治療の参考
報道によれば、整体療法で魚鱗病を二例、治療した。
この二例の病人は、「肝腎陰虚」、「脾胃衰弱」によって
引き起こされたと弁証された。
「滋補肝腎」「健脾和胃」の治療をした。
穴位は、関元、中脘、曲池、陽池(左)、三陰交、太谿、足三里、内関、
腎兪、脾兪などであった。
補法を用いて、毎日1回、前後の兪穴を交代で使用した。
10回を1治療行程とした。
6治療行程の後、皮膚は正常に近づいた。
8治療行程で、基本的には治癒した。
(狭西中医学雑誌 1998、11(3):25-26)
その2
もう一つは、
「中医皮膚病性病学」黄泰康 先生著、中国医薬科技出版社 、2000年7月
魚鱗病の項に、外治の一部として、鍼灸療法が、ほんの3行ほど記載されています。
(1)体針療法:取穴:曲池(きょくち)、絶骨(ぜっこつ)、陰陵泉(いんりょうせん)、
血海(けっかい)、風池(ふうち)、腎兪(じんゆ)。
血虚風燥(けっきょふうそう)の患者には、補法で、針を20分 留置する。
瘀血阻滞(おけつそたい)の患者には、瀉法も用いる。
1日に1回。
(2)耳針療法:耳ツボを取穴する。交感、内分泌、皮質下、腎上腺。
耳針、または小さい豆を押し当てる。1週間に1回。
コメント:鍼灸では、魚鱗癬に対して、腎兪など「腎」と名のつく
ツボ(経穴)で治療しています。
魚鱗癬は遺伝病で、先天的なものです。漢方では、先天的なのもは、
「腎」と係わると考えます。
また、腎臓を移植したら、魚鱗癬が治った、という症例からとを、
考え合わすと、「腎」に対して治療して、効果があるというのは、正しいのかも知れません。
鍼灸は、素人に難しいのですが、腎兪などのツボを温めたりするのは良いかもしれません。
温めることには、副作用は、全くないのですから。
また、魚鱗癬の人は、体が冷えていることが多いので、血海(けっかい)などを
温めるの良いでしょう。
ツボを、温めるのは、温灸が最も簡単で、火傷などの心配もありません。
また、血海は、湯たんぽでも温めることが出来ます。
もし、上記のツボを温めて、多少とも症状が軽減したら、教えてください。