昔、大学の同級生で大学院を出てから、『**食品』に就職したのがいました。
本人に、「何でカレーの会社に行ったんだ?」と聞いたら、
「カレーはスパイスだろ。スパイスは生薬そのものじゃないか。」
と言うのが答えでした。
いや、 全くその通りで、カレーは、生薬の塊で、
漢方薬の成分と共通しているものが、かなりあります。
「医食同源」とか「薬食同源」という言葉は、
本屋でも見かけますし、中華料理の店先などでよく見かけます。
漢方薬に用いられる多くの生薬がスパイスであるのは、
われわれ薬剤師では常識ですが、一般的にはピンとこないでしょう。
デパートやスーパーのスパイスのコーナーには、
様々な生薬が、食品=スパイスとしての別名で、たとえば、
桂皮-シナモン、生姜-ジンジャー、茴香(ウイキョウ)-フェンネル、
番紅花--サフラン、等など
といった具合に並んでいます。
カレーの色づけに用いられるターメリック(生薬名=ウコン)は、
ショウガ科の植物の地下茎を乾燥させたものです。
シナモン(桂枝)やジンジャー(生姜=ショウキョウ)は、
漢方薬の代表的な「葛根湯」の成分です。
シナモンは、婦人向けの「桂枝茯苓丸」の主成分です。
名前にも桂枝=シナモンが入っています。シナモンのにおいが強いですね。
こんな具合で、食品でもあり、生薬でもあるのが数多くあります。
われわれの日常生活を振り返ってみると、
何気なく利用している食品の中に、様々な薬効が潜んでいます。
例えば、お寿司屋さんに行けば、 お寿司の横に生姜を、
お魚屋さんは、刺身の横に大根や紫蘇の葉を添えてくれます。
生姜、大根には消化を助ける働きが、
紫蘇の葉には、アレルギーをおさえ、魚の毒を消す働きが知られています。
紫蘇の葉は、紫葉(ソヨウ)というのが、生薬名です。
このように、私たちは、知らず知らずのうち、生薬の力の恩恵に預かっています。